佐々木さん×柴崎さんトークレポート(終了しました)

人数が・・・大変多くの、といつも言っていますが、本当に多くのお客様にご来店頂きました。編集者の方、作家さん、写真家さんなど、とにかく今回は「繋がり」ということを考えずにはいられない満員御礼となりました。ご来場いただいたお客様、ほんとうにありがとうございました。


こういう状況だった(イメージ)


柴崎:(「ハイポジション」で川口君が何を持っていたのかということが最後まで明るみに出ないということや、「その街の今は」の小野田くんが鞄から何か出そうとして、結局何も出さず、その後は触れられずにストーリーがそのまま展開することについて)
ストーリーとしては、カバンからこう、何か出そうとしたけど、何も出さなかったっていうことが、後で何か意味があるのかなっていう、そういう意味は、全くないんですよ。書いてあること以上の意味はぜんぜん小説にはなくて、ただその、表面だけを書きたいというか、現実の見えているものだけを書きたいという気持ちがすごくあって、物語的な意味はないんですけど、それが、表面としてそこにあるっていうことが、たくさんあるってことが、最大の意味、というか、そういうふうに、世界がそこにあるっていうことを、ただそこにあるってことを、何とかして書きたい、っていう気持ちがあるんですね。
だからほんとに私も、書いてて、川口君だけじゃなくて、時々この人は実はどうだったんですか、と聞かれたりすることがあるんですけど、私もわかりません。


佐々木:(笑)


(中略)


柴崎:わからない、っていうことを、書きたい。


佐々木:小説の中にある隠し事みたいな、隠されていることっぽいもの、っていうのは、出てくると、一応その隠されたものがのちのち、意味を持つとか、その読者の側が、隠されたものをいろいろ類推することによって、類推させるっていうことを狙ってたりとか、そうじゃなかったらその、そういうこと自体に象徴的な意味を持たせるとか、そのいずれかになっていきがちなんだけど、柴崎さんの小説はそのどれでもなくて、ほんとうにそうだったんだっていうことだと思うんですね。(中略)これはまさに現実がそのとおり、っていうことだと思うんです。現実にもほんとに、あのときこうやって話してて、なんか言いかけて、話がずれちゃって、結局あの時言いかけてたことがなんだったんだろう、みたいな、そのまま永遠にこっちも忘れちゃうから、終わっちゃうみたいな、あるじゃないですか。そういうようなことは現実には、あるいは日常って言われるようなもの中には山のようにあって、それをそのままの形で書くということがあるひとつの、独自のものになっているんだと思うんですけれど。

柴崎さんの小説を読んでいていつも思い出す漫画のページがひとつある。
南Q太「トラや」の中の一部分。


ダンス・ウィズ・ウルブズの映画のビデオを借りてきて家で観ているカップルの、見始めてから見終わるまでの時間。
女の人が、テレビ画面の前で、恋人の男の人に言う台詞。

なかなか面白いよね/うん 面白い 面白い/面白いけど 長いよね 映画って/
私 映画って 数あんま見てなくて ダメだなって思ってたんだけど/もっと 見なきゃ いけないって/でも 実は そんな 好きじゃないのかも映画/うん きっと そうだ

「トラや」南Q太著(太田出版)P33〜34より


トラや (1) (F×COMICS)

トラや (1) (F×COMICS)



「トラや」もそういえば、恋人同士でただ何かを見ている、というシーンが多い漫画だった。列車も、動物園も登場する。かわいい女の子も、もちろん。佐々木さんの素晴らしいひとこと。


佐々木:柴崎さんの小説を読んでいると、この世界にはほんとうに、かわいい女の子しかいないんじゃないか、という気がしてきます

他にもトークではNHKのTV番組「ブラタモリ」(タモリさんが古地図を手に都内を散歩しながら、歴史やエピソードなどを探る内容)が大きく取り上げられ、かなり盛り上がっていました・・・なんとブラタモリは10月からレギュラー昇格とのことです。(木曜22時から放送予定)おめでとうございます!


柴崎友香選書フェア」にはもちろんこちらも入っています

タモリのTOKYO坂道美学入門

タモリのTOKYO坂道美学入門

「ドリーマーズ」対談のあとで、何か夢が見れたらいいなと思っていたら間髪入れずに見ました。
明らかに「レッドクリフ」らしき戦国映画の監督をやらされる夢。
たくさんの群集を空撮するのが楽しい、ということを知る。そればっかりやっていたら、スポンサーらしき人から怒られた。
「レッドカーペットまで空撮するつもりかおまえは」という、気の利いたんだか利いてないんだかよくわからない嫌味を言われた。「スリラーだって空撮をもっとしていたらもはやミュージックビデオじゃない、もっとすごい何かになっていたんだ」とよくわからない口答えをする。起きてからも、その嫌味は実際に言われたことみたいにショックが続いた。

柴崎さんの小説の中の「映画を撮りたいと言っている男の子」について、柴崎さんとお話したことが発端と思われますが、マイケル、空撮、夢の中の引きずりについてなど、お二人が対談で仰った事のほとんどがまんべんなくというか単純にというか使用されています・・・。夢の中までトークが持ち込まれたようで、素敵な1日になりました。

今回も何度も佐々木さんの「ここでこの質問を・・・!」と思う瞬間があり、ずっと鳥肌が立ちっぱなしでした。柴崎さんに持ってきて頂いたCDが実際に、喫茶に流れた時も感慨ひとしおでした。「ここはどこなんだ」と思う時間が何度もありました。なんだかすごい空間を作っていただいた佐々木さん、柴崎さん、ほんとうにありがとうございました!

ドリーマーズ

ドリーマーズ