佐々木さん×前田さんトークショーレポート(三回目)三島賞・前田さん受賞おめでとうございます

                

佐々木敦さん「批評とは何か?批評家養成ギブス」(メディア総合研究所)
前田司郎さん「大木家のたのしい旅行」(幻冬舎)刊行記念
佐々木敦×前田司郎トークセッション「ながくトーク
(2009年1月22日、場所はジュンク堂書店新宿店8階喫茶室にて開催)


前田:(小説について)なんかあの、ぜんぜん書けてないと思っていて。書かない。こう、書かないやと。書けないことは書かないようにしています。

佐々木:書かないというのは、その、説明をしないということ?

前田:そうですね。あまり言葉を重ねないように。そうすれば読む人のほうで勝手に考えてくれるだろうと。その感覚は、多分戯曲を書いていて、俳優が説明できるだろうと思う、せりふに説明させない、俳優に身を預けるみたいな感覚があるから、それだったら小説のほうでも読者に身を預けるみたいな感覚を。

佐々木:
なんかわりとこう、自分でもやっぱこれはこれぐらいだと上手くわかってもらえないかもしれないから、もう一歩ふみこんでこう解釈できたな、と思えるときにもぐっとおさえるみたいな?

前田:そうですね。難しいと思ったら書かないですね。あとは読む人が。そっちのほうが豊かな気がして。

前田さんの「お」と「物」の使い方


「大木家」にも顕著に見受けられることだが、前田さんの文章やタイトルのつけ方においてしばしば見受けられる点として「丁寧語の使用」というのがある。物凄くそれが凝縮されて現れていると思ったのはNHKドラマのタイトル「お買い物」。「おかいもの」ではない、「買い物」でもない。大木家では特にスーパーの「お魚コーナー」という場面でしつこいほど「お魚」が多用されているが、他のシーンではあっさり「魚」と明記されていたりもする。一番私の好きな「前田さんの丁寧語」はこの台詞です。


子「違うよ父ちゃん。お誕生日の人を驚かすのがビックリパーティーだよ、お誕生日の人が自ら驚かすのは、なんか・・・必死だよ」

               「びんぼう君〜21世紀版〜」台本P12より


本当におめでとうございます。トーク時にも「賞が取れなかったときのリアクション」の話題が出ていたこともあって、受賞翌日はジュンク堂でも「素晴らしい」の声があふれました。受賞作はこちら↓


夏の水の半魚人

夏の水の半魚人