はがさない人たち(直方より)

あけましておめでとうございます。
実家に帰りました。よくわかりませんが廊下に置いてあったテレビの画像。3年くらいずっとこのまま。
父が亀の飼育に異様に凝り出していて煌煌と亀のための黄色い照明が玄関についていた。「犯人出てきなさい」くらいの明るさ。明らかに異常だったので夜は消そうとしたら「24時間だから」と言われて黄色いのを紫の照明のに変えられた。1年間いなかっただけでこの異空間。漁師のいとこに今年も集魚灯の話を聞く。原油高による漁船燃料の危機により、新しい漁船はLEDがついているものがあるらしい。「でも色がイカが好きなやつじゃないと駄目だから」LEDじゃない照明で「イカが好きな色のやつを」会社の人と去年からいくつか選んでいるけど、中々決められないとのこと。イカが好きな色って・・・今年は決まるかなあと言ってた。宇宙から見える地球上の最も明るい光は、日本海イカ釣り漁船団だという話を聞いたことがある。1年以上そんな光のことについてこの子は考えていたんだな。なんかすごい。

近くの饂飩屋の人がダライ・ラマを呼ぼうと計画しているらしい、だから会場みたいのをそのうち作るらしい、と祖母が叔父にラフな感じで言っていた。「本当は戦時中、裏の寺にかくまっていたっぽいよ、また来るんだよあの人」「それはダライラマじゃなくて日本人の人でしょ、日本語喋ってたじゃないどう見てもあの人」「日本語も喋れるっちゃろうが」「あの人5年くらいいたじゃん、ダライラマが5年もこんなとこにいるわけないでしょ」上記のような会話が十分くらい続いた後、唐突に祖母がふわふわした表情で、昔自分は饂飩屋の息子に好かれていたらしい、という告白を始める。「まさかそれを言いたいがためにダライラマの話をでっちあげたんじゃなかろうね」「違う」「じゃあ何でこんな話するの、どうでもいいでしょ」「どうでもよくなかろうもん」この人たちは確実にあと十年は死なないなと思った。